飲食店のお給料事情。 オーナーの平均年収から正社員・アルバイトの給料まで

お給料イメージ

食べることが好き。お酒が好き。
そんな思いから、飲食店の経営・飲食業への就職・アルバイトを志す人も少なくないことでしょう。
しかし、メディアの報道や口コミの中には、長時間労働・低賃金・ブラックバイトなど、過激なワードを見かけることも少なくありません。
「本当に飲食店で働いて大丈夫なのか?」今回は、「正社員」「アルバイト」「飲食店オーナー」の3つの働き方から、飲食店のお給料事情を紐解いていきます。

    目次
  1. 飲食業界に正社員で就職したいあなたに。年収・社会保険・ボーナス…気になるあれこれ
  2. 飲食店経営は儲かる? 年収600万円のオーナーが経営する店舗は年商いくら
  3. 飲食店のアルバイトはいくらなら集まる?人手不足の今、アルバイトが飲食店で働く意味
  4. 飲食店の給料まとめ

飲食業界に正社員で就職したいあなたに。年収・社会保険・ボーナス…気になるあれこれ

飲食店イメージ

飲食業界は低賃金なのか?

厚生労働省の「平成28年賃金構造基本統計調査」によると、残念ながら主要6業種(製造業・金融業,保険業・宿泊業,飲食サービス業・教育,学習支援業、医療,福祉,サービス業(他に分類されないもの)の中で、「宿泊業,飲食サービス業」は男女ともに最も低い賃金水準(男性:271.1千円、女性:196.7千円)となっており、最も賃金水準の高い「金融業,保険業」に従事する男性の平均年収466.4万円と比較すると、年収にしておよそ200万円の開きがあることになります。
飲食業界は低賃金なのか?」という質問に対しては、残念ながら、他業種と比較すると相対的に「低賃金である」と言わざるを得ないようです。

飲食店の平均月収(正社員)は「27~30万円」で27%

平均賃金では、他業種と比較して低賃金というデータの出た飲食業ですが、具体的には、いくらくらいもらっている人が多いのでしょうか?
飲食店専門求人サイト「求人@飲食店.COM」が過去2年以内に飲食店で正社員として勤務した経験のある、求職者288名に対して実施したアンケート結果が参考になります。

飲食店の正社員勤務-月給グラフ
飲食店の正社員勤務-月給と経験年数グラフ

求人@飲食店.COM 求職者アンケート“飲食店の正社員、気になる給与の実態は?月給27~30万円が27%、経験を積むと給料は上がる傾向”より抜粋)

アンケート結果に基づくと、飲食業の正社員月給で最もボリュームが多いのは27~30万円・年収ベースで324~360万円のグループで、全体の27.4%を占めています。
しかし、給与別に経験年数の構成を確認してみると、27~30万円のグループは経験年数7年以上の経験豊富な中堅~ベテラン層が多く、新卒で入社して数年でこの給与水準に到達するのはかなり難しそう。
しかし、逆に言うと、長く勤めて経験を積めば相応のお給料を期待できる、とも言えます。

飲食店で高収入を狙うなら、サービス系の店長よりも調理系の料理長

同サイトでは、職種別・業態別の月給アンケート結果も公表しています。
その結果によると、「店長・マネージャー」と比較して「料理長」の方が月給の水準が高い傾向にあり、月給31万円以上が52.1%と過半数が月給31万円以上を稼いでいます。
一方、「店長・マネージャー」では、月給31万円以上が39.1%となっており、料理長と比較すると、相対的に給与水準が低いことが分かります。
また、「洋食(イタリアン・フレンチ・その他西洋料理)」「和食」「居酒屋・ダイニングバー」「カフェ・スイーツ」の4業態で最も給与水準が高かったのは「洋食」業態で、22.7%が月給35万円以上と回答。
22万円以下の構成比も28%と3割を下回ることから、全体的に給与水準が高いことが伺い知れます。
一方で、最も月給が低い傾向にあるのが「カフェ・スイーツ」業態。
月給35万円以上と回答したのは0%、月給22万円以下の構成比が65%と過半数を大きく超えており、低賃金の雇用者が多い業態であると言えるでしょう。

月給×職種グラフ
月給×業態グラフ

求人@飲食店.COM 求職者アンケート“飲食店のリアルな給与調査!職種・業態・月給の関係は?”より抜粋)

飲食業では、大企業で働くか中小企業で働くかによって待遇・働き方が異なる

明確な統計資料は存在していませんが、飲食大手の求人と、中小企業や個人オーナー店の求人では異なる点があるようです。
一般的に、大企業では、「社保完備」「賞与年2回」「交通費完全支給」など、一般的な会社勤めのサラリーマンと同等の福利厚生・ボーナスを得られる場合が多い様子。
一方で、中小企業や個人オーナーの店舗では国民年金や国民健康保険に自身で加入しなければならなかったり、賞与は特別に利益の良かった年や月にご祝儀的にふるまわれるだけで定期的には支給されなかったりする場合もあるようです。
この点だけ見てしまうと、中小企業や個人オーナー店舗に就職するメリットは少ないよう見受けられますが、一方で大企業ではいわゆる「雇われ店長」でお店の経営に関わる重要な経費をあえて見えないように本部にコントロールされてしまったり、
メニュー開発からオペレーションまで細かく本部が決めてしまい、自分では何一つ決められなかったりと、将来独立を目指す方にとっては経営の勉強のために入社したつもりが全くの会社員になってしまい、かえって遠回りになってしまった。ということもあるようです。
総じて、大企業ではよりサラリーマンに近い働き方、中小・個人オーナー店では経営者に近い働き方ができるのが特徴です。ご自身のゴールによってどちらが良いか変わってくる部分かと思います。

飲食店経営は儲かる? 年収600万円のオーナーが経営する店舗は年商いくら?

お給料イメージ

以前、飲食店専門誌のサイトに飲食店経営者の年収アンケートが掲載されていたそうです。
現在、情報元となるサイトでは該当するページを閲覧できなくなっていますが、当時の購読者によると飲食店経営者の平均年収として627万円と掲載されていたそうです。国税庁の「平成28年分民間給与実態統計調査」によると、国民の平均給与は422万円ですから、一般的なサラリーマンに比べると200万円以上も稼いでいることになります。
しかし、飲食店経営者の皆様ならお分かりかと思いますが、年収600万円ということは、年商から材料費や人件費・家賃などの諸々の経費をすべて差し引いた上で600万円残っているということです。
この経費を差し引いた上で残った利益のことを「営業利益」と呼びますが、一般に、飲食業では営業利益率10%以上で優良店と目されます。
つまり、営業利益率10%の優良な経営をしている前提で600万円の利益を残せたということは、そのお店の年商は6,000万円ということになります。
年商6,000万円です!
仮に、15坪の店舗だった場合、坪売上33万円以上ないと年商6,000万円を達成することは困難です。坪売上20万円で繁盛店と呼ばれるのですから、坪売上33万円は到底達成できそうにもないですね…。
では、どうやって高所得オーナーは多くの年商を稼いでいるのでしょうか?
このような高所得オーナーは、「多店舗展開」をしているケースが多いようです。自身が出店した1号店に加え、正社員を店長に据え2号店をオープン。
2号店が1号店と同等に稼いでくれれば、年商は倍になります。また、席数の多い「大箱」を所有するオーナーも多くの年商を稼ぐことができますが、これから飲食ビジネスを始めるという方にはいきなり大箱のオーナーになることは困難でしょう。
高所得オーナーへの道は、利益率を確保しつつ、多店舗出店で更なるビジネス規模の拡大を目指すことから始まるようです。

飲食店のアルバイトはいくらなら集まる?人手不足の今、アルバイトが飲食店で働く意味

求人大手「リクルートジョブズ」では、アルバイト・パート募集時の平均時給の調査レポートを定期的に公表しています。
2018年2月度の調査では、三大都市圏(首都圏・東海・関西)で飲食店のホールや調理のパート・アルバイトを指す「フード系」の時給が過去最高額を記録し、989円(前年同月比+22円、+2.3%)に達したとしています。
人手不足が叫ばれて久しい飲食業界では、アルバイトの人件費高騰が続いています。
同レポートによると、三大都市圏のフード系平均時給は上昇の一途を辿り、時給1,000円を目前にとらえています。

アルバイト面接イメージ

「三大都市圏職種別 平均時給推移 直近36カ月の動向」



フード系だけでなく、販売・サービス系、事務系などの他の職種でも人手不足のため同様の傾向で、資金に余裕のある企業は率先して時給を高く設定し、優秀な働き手を確保しにいっています。
従来飲食店のアルバイトを支えてきた学生やフリーターにとっては完全な売り手市場で、様々な職種・条件からアルバイトを選択することができるようになり、あえて立ち仕事で決して楽とは言えない飲食業でアルバイトをしようという若者も減っているようです。
このような飲食店にとって厳しい状況下で、どのようにアルバイトを集めればよいのでしょうか?

・多様な働き方を受け入れる

時給を上げることは確かに効果的な対策です。
しかし、飲食店経営において、人件費のUPはすぐさま不健全な経営につながります。
時給UPはあくまでほかの対策をすべて講じてから考えるべきです。
まず、考えるべきは働く側の満足度です。
パート・アルバイトの中には、「まだ子供が小さいけれど働きたい。週1日から始められないか」「昼間別の仕事をしている。夜に本業に影響しないレベルで少しだけ働きたい」というニーズがある場合があります。
確かに、現場としては毎日同じ時間に来て社員のように8時間以上働いてくれるアルバイトは心強いです。
けれど、そのような雇用者側として都合の良い人材はそれだけ競争も激しく、確保することは難しいでしょう。
週1日~、1日3時間からOK!など多様な働き方を容認することは人材の選択肢を増やすはずです。

・自店ならではの楽しさ・メリットを創る

人材獲得に誰もが苦労している今、それでもアルバイトが集まるお店はあります。
地域の人気店であったり、現在働いている人たちの口コミで次々と応募者が集まるお店です。
これらのお店に共通しているのは、その店で働く楽しさ・メリットが明確になっている点です。
地域の人気店でアルバイトをすることによって、ブランド価値を感じるアルバイトもいますし、口コミで応募してくれる人は「知っている人と一緒に働ける」というメリットを享受することができます。
「うちの店で働くとアルバイトにとってどんな良いことがあるだろうか?」一度考えてみてください。

・未経験者でも即戦力になれる環境作り

求人に力を入れるのはもちろんですが、アルバイトが入ってからの対策も大事です。
飲食経験者・熟練者を都合よく雇用するのはますます困難になりそうです。
未経験者でも簡単なトレーニングで順応できるような、簡易なオペレーションに今からオペレーション改善しておきましょう。
業務用冷凍食品の活用や、下処理済み食材は調理の手間を省きますし、ホールに受注システムを導入して人為ミスの起こりづらい環境を作るのも手です。

飲食店の給料まとめ

  • ・飲食業の平均月給は他業種と比べると相対的に低いが、経験が重視されるため長く勤めて経験を積めば相応の賃金を得られることが多い。
  • ・飲食業の中で高収入なのは料理長などの調理系スタッフ。業種ではフレンチ・イタリアンなどの洋食。カフェは他業種と比較すると賃金が低い傾向にある。
  • ・飲食店経営者は、営業利益率10%の優良経営ができたとして、600万円の年収を得ようとすると6,000万円の年商が必要。高所得オーナーは、多店舗展開をしていることが多い。
  • ・フード系アルバイトの時給は右肩上がりで時給1,000円が目前に迫っている。他業種との人材の奪い合いが発生する中、多様な働き方を受け入れる・自店で働くメリットをアピールすることで、飲食店で働く意義を見出してもらう必要があります。

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