飲食店はもっと儲かる!儲けの仕組みを徹底解説。 原価計算の基礎・適正な原価率・棚卸しまで
※この記事では、飲食店開業準備中の方、個人飲食店の経営者の方を対象に、飲食店の原価計算の基本や利益を圧迫する問題点の解決方法などをまとめて紹介します。
開店から数か月。目の回るような忙しさが続く中、あなたはふと疑問に思います。
商売をする上で一番重要なのは「儲ける」こと。まずは「原価」に着目して、原価計算の基本から、適切な原価率の目安などを紹介!
「おっかしいなぁ、なんで黒字にならないんだろう?」
「当初の目標よりも売り上げは好調。ほんとはもっと儲かってもいいはずなのに、ほとんど利益が残らない。なんで?」
綿密な売り上げ計画を立てて開業した、という方も、正直ざっくりとした計画しか立てていない、という方も、「これくらいは儲かっててほしいな」というイメージはあると思います。 しかし、毎日たくさんお客さんを迎えて、レジは現金であふれている。これはさぞかし儲かっているに違いないと思って月末に〆てみると、なんとほとんど利益が残っていない。・・・なんてこと、ありませんか?
現実問題、飲食店の利益コントロールは他の業界と比較しても難しいもので、毎月同じだけ発生する、家賃・給与に代表される固定費に加えて、売り上げに連動して上がったり下がったりする、原材料費・アルバイト人件費のような変動費も管理しなくてはなりません。
しかし、だからといっていつまでもどんぶり勘定でいいわけではありません。 言うまでもありませんが、商売をする上で一番重要なのは「儲ける」ことです。
そこで、今回はまず「原価」に着目して、原価計算の基本から、適切な原価率の目安、原価を正確に把握する方法、原価の大敵オーバーポーションや食材ロスの削減方法などを検証していきます。
また、原価計算をマスターした方のために、「飲食店はもっと儲かる!おススメ高収益食材 8ジャンル25アイテム一挙総まとめ」も準備しました。 食品総合卸だからこそできる、具体的で即効性のある提案をしております!ぜひ参考にしてみてください!
-
目次
- 飲食店でいう原価とは? 答え:食材などの材料費です。
- 適正な原価率はどれくらい?“3割の意味、分かりますか?”
- 原価率が高くてお店の目玉になる「集客商品」と原価率が低くてお店が儲かる「収益商品」
- 原価を正確に把握するには? 棚卸し
- 知らないうちに増えている原価、どうして? 歩留まり・オーバーポーション・食材ロス
- まとめ
飲食店でいう原価とは? 答え:食材などの材料費です。
原価とか原価率とかいうと、なんだか難しそうに聞こえますが、とても簡単です。
原価…メニューにかかる食材などの材料費
原価率…売り上げに占める原価(材料費)の割合 = 原価÷売上高
例えば、牛肉とコーンとブロッコリーを合わせて500円で仕入れて、1,250円のステーキとして販売しているとすると、原価は材料費である牛肉とコーンとブロッコリーの500円。原価率は500÷1,250=0.4=40%となります。
ちなみに、500円で仕入れた商品を原価率40%で販売したい場合は、原価÷原価率=販売単価で計算してください。
このステーキの場合は、500÷0.4=1,250です。
適正な原価率はどれくらい?“3割の意味、分かりますか?”
さて、原価率の考え方は分かりました。
しかし、問題は原価率が「儲かるレベル」に設定されているか、です。
適正な原価率というと、巷では「3割」が定着していますね。
確かに、お酒とフードを提供する居酒屋・ダイニングなどの原価率は30%くらいに調整できれば、必然的にFL比率(売り上げに占める材料費(FOOD)+人件費(LABOR)の比率。60%以下に収めるのが好ましい。)も無理のないレベルに落ち着くことが多いので、ある程度信憑性のある数字だと思います。
しかし、問題はこの「3割」をどう解釈するかです。
この3割の解釈を間違えているお店は、見る人が見るとすぐにわかります。
先日、私も「アチャー」となる居酒屋さんに遭遇しました。
「枝豆」「フライドポテト」「マカロニサラダ」の価格が、異様に安いのです。
あえての戦略の場合もありますが、そのお店の場合は、枝豆・フライドポテトが揃って爆安な上に、他に利益を稼いでいるような商品が見当たらず、かつどれが目玉商品か分からない状態でした。
「フードメニューの原価率を一律で3割に設定してしまったんだな・・・」
3割の意味を履き違えてしまった、残念な例です。
■□■枝豆もステーキも、ハイボールもビールも「一律」原価3割では、お客さんが来なくなります!■□■
「一律で3割だろうと、商品毎に原価率を調整していようと、結局は同じ3割じゃない?」と考えてしまうのは早計です。
そもそも、数ある飲食店の中からお客さんに選んでもらうためには、他のお店よりも魅力的な食事やドリンクが提供されていなければなりません。
お客さんの感じる「魅力」「満足」にはコストパフォーマンスが直結しています。
「こんなに大盛りなのに、500円でいいの!?」
「他のお店では2,000円はくだらないフォアグラを1,000円で食べられるなんて!」
料理人やプロでなくとも、相場感というのはあるものです。
「これって安くない?!」「お得じゃない!?」という驚きが「良い店だ」という評価に直結するのです。
だからこそ、優良店・ライバル店は、原価を度外視して高級食材や高品質の材料を使って、お客さんがあっと驚くような集客商品を看板に掲げて、お客さんを呼び込むのです。
そこへ来て、もしあなたのお店が、一律原価3割の法則に基づいてメニュー開発をしていたらどうでしょうか?
とてもではありませんが、原価5割、いや7割!という他店の集客商品に、原価3割では太刀打ちができません。
結局、お客さんの評価も上がらず、客足が途絶えてしまいます。
お客さんに来てもらえなければ、原価率など問題にもなりません。
これが、原価率一律3割でメニュー開発をしてはいけない理由です。
原価率が高くてお店の目玉になる「集客商品」と原価率が低くてお店が儲かる「収益商品」
一律原価3割ではなんだか危なそうだ。ということがわかったところで、「集客商品」と「収益商品」の考え方についてご紹介したいと思います。
集客商品…お客さんを呼び込む目玉商品。他店と差別化するため総じて原価率は高くなる傾向にある。フロントエンド商品とも言う。
収益商品…原価が低く、お店が儲かる商品。集客商品で呼び込んだ顧客に買ってもらえるよう施策をとる。バックエンド商品とも言う。
ハンバーガーショップの集客商品は「ハンバーガー」です。お客さんは、安くておいしいハンバーガーを求めてやってきますし、競合にも負けられないので、原価率は高めです。
収益商品は、「フライドポテト」や「ドリンク」です。原価率が低く儲かるので、ハンバーガーとセットで買うとお得なセットメニューを展開して、できるだけお客さんに買ってもらえる努力をします。
これと同じ施策を取り入れることで、個人飲食店でも大手チェーンに負けない競争力と儲けを両立できます。
では、焼き鳥屋を例に考えてみましょう。
焼き鳥屋の集客商品は「焼き鳥」です。
収益商品は、フードなら「枝豆」「冷奴」「フライドポテト」「ポテトサラダ」など。ドリンクなら、「生ビール」よりも「ハイボール」です。
さて、焼き鳥と一緒にこの収益商品もたくさん頼んでいただき、お会計1回あたりの原価率が3割以下に落ち着くのが理想です。では、収益商品を頼んでいただくにはどうしたらよいでしょうか?
- 1)メニューの目立つところに収益商品を掲載する
- 2)店員による声かけで収益商品に誘導する
- 3)集客商品と収益商品をバランスよく設定したセットメニューを販売する(ビール1杯とおつまみ数品など)
などの方法が一般的です。
収益商品としてオススメの商品や、もっと詳細な販売促進戦略については別記事にまとめましたので、「飲食店はもっと儲かる!おススメ高収益食材 8ジャンル25アイテム一挙総まとめ」こちらもご覧ください。
原価を正確に把握するには? 棚卸し
さて、集客商品と収益商品の考え方を取り入れ、お客さんもバランスよく注文をしてくれるようになりました。
けれど、なぜかお店の利益は好転しません。何故でしょうか?
この場合、原価を正確に把握できていない可能性があります。
■□■棚卸しの重要性■□■
棚卸しというと、飲食店とは縁遠いイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、原価を正確に把握するためには飲食店でも必要なオペレーションです。
-
•棚卸しとは
定期的に食材やドリンクの在庫、仕込み中の商品も含めた在庫の実数を調査し、実在庫金額がどれだけあるか計算することです。
実在庫金額がわかることで、正確な売上原価の把握ができるようになります。
毎月1回決められた日に実施する事が多いですが、日次や週次で実施することもあります。 -
•棚卸しに必要なもの
棚卸し表
(最低限、店内の全在庫を網羅した在庫品リストに、商品規格(重量、容量など)、仕入れ価格※の情報が必要です)
※先入れ先出し法(最終仕入原価法)では、直近の仕入価格。 -
•棚卸しのやり方(先入れ先出し法)
決まった日に定期的に実施します。月末が一般的です。
棚卸表を基に、食材・ドリンクなどの現在庫が何個あるかカウントします。
※棚卸表は、イチから作らなくとも、インターネット上のエクセルフォーマットやアプリが便利です。
この際、仕込中の商品もカウントに入れてください。
棚卸表の仕入金額を基に、いくらのものが何個あり、合計で何円分の在庫が現在お店にあるかを算出します。 -
•売上原価の求め方
期首棚卸高 + 仕入高 - 期末棚卸高 = 売上原価
「期首棚卸高」は、前月の棚卸し時の実在庫高。前月からの繰越分。 「仕入高」は、今月仕入れた金額。
「期末棚卸高」は、今回の棚卸し時の実在庫高。翌月への繰越分。
期首棚卸高と期末棚卸高を加味することで、前月使わずに今月使った材料・今月仕入れた材料・今月使わずに来月使う材料が明らかになり、正確な売上原価がわかります。
例)期首棚卸高が10万円、仕入が40万円、期末棚卸高が10万円なら、売上原価は10万円+40万円-10万円=40万円。
-
•原価率の求め方
売上原価 ÷ 売上高 = 売上原価率
(期首棚卸高 + 仕入高 - 期末棚卸高) ÷ 売上高 = 売上原価率
例)期首棚卸高が10万円、仕入れが40万円、期末棚卸高が10万円で、売上高が100万円の場合、売上原価40万円÷100万円=0.4=40%
もし、想定している原価率が30%であったにも関わらず、実際は40%や50%になっていたら…
販売価格は変わっていないのに、材料費だけ想定よりも使っているわけですから、利益が残らないのも当然です。
では、何故認識と現実がかみ合わないのでしょうか?
知らないうちに増えている原価、どうして? 歩留まり・オーバーポーション・食材ロス
棚卸しをしてみたら、何故か知らないうちに膨れ上がっていた原価率。
どうしてこんなことが起こってしまったのでしょうか?
よくある原因をまとめました。
■□■歩留まりを考慮してメニュー開発をしていなかった■□■
歩留まり(ぶどまり)とは、食材の何%を製品に使えるかという考え方で、飲食店の場合は、生鮮野菜や肉・魚などの原料系の材料を使ったメニュー開発時に考慮しなくてはならない数値です。
例えば、肉の場合で、1kgの原料のうち、脂身をそぎ落としたら使えるのは800gだけ、というような場合は、歩留まりは80%になります。
このように、原料系の材料は100%すべてを材料として使えるということがあまりありません。
しかし、当然ですが1㎏仕入れて800gしか使えなかったからと言って、肉屋さんは200g分を返金してくれるわけではありません。
この捨てる部分を考慮に入れずにメニュー原価を設定していた場合、棚卸しで大きな差異として現れてきます。
■□■気前良くサービスしすぎた。目分量でレシピよりも多くの材料を使っていた。 オーバーポーション■□■
本来はトッピングのチャーシューは1枚のところ、常連さんに気前よく2枚サービスした。
チーズの盛り合わせは本来100gのところ、なんとなく目分量で盛り付けていたら130gあった。など…
設定したレシピより多くの材料を使って、お客さんに提供してしまうことを「オーバーポーション」と言います。
レシピよりも多くの材料を使っているのにも関わらず、販売価格は据え置いているわけですから、当然利益を圧迫します。
オーバーポーションが発生する理由は主に2つです。
-
1)レシピがない。あるいはレシピを無視して目分量で作っている。
1皿あたりの単価が安い居酒屋では、ほんの数十円の違いがダイレクトに原価率を押し上げます。
だからこそ、事前にグラム単位で計量してレシピを作成し、レシピに基づいて調理をしなければならないわけですが…
忙しい現場では目分量が横行しがちです。
しかも、少なくてはクレームが出るかもしれないと思うと、たいてい多めの盛り付けになります。
オーバーポーションを防ぐには、まずは綿密なレシピ作成が大事です。
加えて、忙しい現場でも楽にオペレーションできるような工夫が必要です。
オーバーポーションの抑制には、調理済みの冷凍食品が効きます。
1食ずつ個包装になっている個食パックは、確実に毎回同じ量を提供できますし、バラ凍結のフライドポテトや鶏のから揚げは、仕込みの時点でレシピ通りに計量して小分けにしておけば、調理時に計量する手間も省けて提供スピードの向上にもつながります。
オーバーポーションの発生を抑制しつつ、お客さんのメリットにもつながるお役立ちアイテムです。 -
2)気前良くサービスをしすぎている。
常連さん、新規さん、ついつい手厚くサービスしたくなってしまうものです。
しかし、過剰なサービスは考え物です。
お客様をもてなしたいという皆さんの気持ちをないがしろにするつもりはありません。
ですが、お客様は一度受けたサービスを次も期待します。
今回ちょっと多めに盛り付けてもらったら、次もこの量で提供してもらえることを期待してしまいます。
サービスのつもりが、お客様の期待を裏切ることになってしまえば、本末転倒です。
■□■食材のロスが増えている■□■
原価率を押し上げる理由の中でも特にインパクトが大きいのが、この「食材のロス」です。
仕入れた食材を結局使わず腐らせてしまった。落としたり割ったりして使えなくなった。仕込みを失敗して使えなくなった。…などです。
飲食店の特徴は、材料である食材の使用期限が極端に短い事です。
野菜や鮮魚は数日でダメになってしまいますし、仕込みの過程で加熱や味付けを失敗してしまうとお客様に提供できず、売り上げになりません。
使わなかった材料全部が丸損になるわけです。
となると、かなり神経質に鮮度や発注のタイミングをコントロールしなくてはならないのですが、これには経験やノウハウが必要です
経験やノウハウの蓄積がない、飲食業未経験のジョブチェンジ組は特に苦労しがちですし、飲食業経験者もオーナーともなると調理以外にやることが多く、経験の少ない従業員に任せる仕事も増えてきます。
•冷凍食品で食材のロスを最小限に収める
冷凍の仕入品というと、手抜きのイメージが付きまといますが、食材のロスを抑えるにはなくてはならない商品です。
材料が原料に近ければ近いほど、調理の工程が多ければ多いほど、食材のロスは発生しがちです。
「揚げるだけ」「解凍するだけ」「カットするだけ」のような、調理工程が少ない冷凍食品は、失敗するリスクを減らしてくれます。
「下茹で済みのモツ」「フィーレ加工して粉だけ付けたアジ」「トッピングのないピザベース」のような下処理だけ済ませてある半調理品は、調理の工程を減らしつつ、お店の味付けやアレンジを邪魔しません。
そもそも、冷凍食品は賞味期限が長いので、1週間注文がなかったからと言って、腐って使えなくなることもありません。
冷凍食品は、お客さんを呼び込む「集客商品」としては不向きですが、集客メニューを支える「収益商品」としては非常に優秀です。
イチから手作りすることは尊いことですが、お店の利益改善の一案として冷凍食品もぜひ検討してみてください。
まとめ
•飲食店で言う原価とは、食材などの材料費。
•原価率は、売り上げに占める原価(材料費)の割合で、原価÷売上高。
•居酒屋などのお酒とフードを提供する業態の適正な原価率の目安は概ね3割。
•ただし、メニューの原価率を一律に3割で設定してしまうと、高原価でお客様にとって魅力的な目玉商品を掲げた競合店に見劣りして客足が遠のく原因になる。
•「集客商品」とは、お客さんを呼び込む目玉商品。他店と差別化するため総じて原価率は高くなる傾向にある。
•「収益商品」とは、原価が低く、お店が儲かる商品。集客商品で呼び込んだお客さんに買ってもらえるよう施策をとる。
•収益商品でお客さんを呼び込み、収益商品とバランスよく注文してもらい、「お会計1回あたりの原価率が3割いかに落ち着く」のが理想。
•原価を正確に把握するには、棚卸が必須。定期的に実在庫金額を確認することで、正確な売上原価が把握できるようになる。
•想定よりも原価が膨れ上がっている場合、主要な原因は3つ。「歩留まりを考慮していない、レシピ設計」「レシピより多くの材料を使ってしまう、オーバーポーション」「食材のロス」