素人に飲食店開業は無理?! 想像を超えるレッドオーシャンを生き残る経営ノウハウ ‐事業計画・お金・利益の視点から‐

経営ノウハウイメージ

「居心地の良い空間でお客さんにくつろいでもらいたい」「自慢の手料理をもっと多くの人に食べてもらいたい」など、
定年を迎えてある程度時間とお金に余裕を得たシニア、独立を考えたことのある会社員の皆さんの中には、飲食店経営に夢を馳せる方も多いのでは?
実際に、製造業や建設業などを開業しようと思えば、工場を建てたり優秀な職人を何人も雇用したりと、およそ個人ではどうしようもないような大規模な投資が必要になってきます。
しかし、飲食店ならばおよそ数百万円で店舗をあつらえることができますし、物件は賃貸が主流で購入する必要もありません。
仕入先もインターネットを使えば簡単に見つけられますし、広告もいまや格安印刷やSNSで割安にできる・・・。
なにより、街を見回せば、自分の料理より美味しくないのにまずまず人の入っている居酒屋、人は大して入っているようには見えないけれど長年続いている定食屋がいくつもあります。
これなら自分でもできそう!」と野心がメラメラと燃えあがってしまいますね。

しかし、参入障壁が低いからこそ、飲食業界は非常に入れ替わりの激しい厳しい業界です。
個人飲食店への融資を多く行っている「日本政策金融公庫」は「新規開業パネル調査」という調査で、
2011年から2015年までの5年間の飲食店・宿泊業の廃業率を18.9%と発表しています。つまり、5年で約2割が閉店に追い込まれている、ということです・・・。
Googleで「飲食店 経営」などと検索してみても、素人が安易に始めるべきビジネスではない!という警鐘を鳴らす記事が多く見つかります。残念ながら、データを見る限りおどかしではないようです。

そこで、今回は経営の要「事業計画・お金・利益」の3つの視点から、飲食店ビジネス未経験のジョブチェンジ組の経営者が、小さな飲食店を安心して続けられる方法を模索していきます。

    目次
  1. 始めてから考える、では遅い!事業計画は理念・コンセプトを磨き上げる最適の方法。
  2. いくらあれば開業できる?初期費用とお店を続けるための運転資金の話。
  3. 利益は「いろいろ使って残ったお金」ではなく、「残すべくして残したお金」です。
  4. まとめ

始めてから考える、では遅い!事業計画は理念・コンセプトを磨き上げる最適の方法。

事業計画イメージ

お店の理念・コンセプトは評価されて初めて意味がある

どのような事業でも、経営者として一番大事なのは、理念やコンセプトだと言われます。もはや一般常識として浸透しているのではないでしょうか。
開業準備中のオーナーも、まずは「どんなお店にしたいか」「どんな価値を創造してお客様に喜んでもらうのか」を考えるところから始めることでしょう。
中には、「構想は練りに練った。目を閉じればいつでも理想の店舗イメージとポリシーにならって活き活きと働くスタッフが浮かぶ。」という方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、その理念やコンセプトはただ頭の中で出来上がっていればいいものではありません。理念もコンセプトも「評価」されなくては意味がないのです。
そもそも、銀行や日本政策金融公庫などの金融機関から融資を受けるには「事業計画(開業計画)」として、理念やポリシーを形にしてプレゼンテーションし、評価を受けなければなりませんし、
めでたく開店した後も理念とコンセプトの権化である店舗は常に「お客様」という評価の目にさらされます。

評価を得るには、まずは相手にビジネスの内容を理解してもらうこと

とはいえ、いきなり自分の理念を周りの家族や友人、金融機関の担当者などに語っても、情熱は伝わるかもしれませんが、事業の内容がわからないので「評価」してもらうのは困難です。
そこで、評価を受ける側の経営者は「事業計画」を作成する必要があります。
初期投資、初期投資の回収見込み年数、客単価、人件費率、回転率・・・事業にかかわる経営指標を洗い出し、数年先まで見越して計画書という形にする必要があります。
この計画書があることで、評価を得られる幅がぐんと広がり、得られるサポートも厚くなります。金融機関は評価次第でお金を貸してくれますし、コンサルティング会社はより的確なアドバイスをしてくれます。
トレンドの「クラウドファンディング」で広く理念・コンセプト・事業計画を公開し、個人から少額ずつ融資を得ることだってできるようになります。

事業計画は自己内省の良い機会でもある

また、事業計画にはもう一つ利点があります。先述のとおり、事業計画を作成するには、ビジネスの内容を細かく検証していかなくてはなりません。
「この立地でこの客単価は可能か?」
「投資回収に5年もかかる・・・うちのコンセプトは私の大好きな流行スイーツだけど、5年後もこれは流行しているのかな?」
などなど、計画を立てていくうちに、無理のある点や、ついつい「自分が好きだから」など独りよがりになってしまっていた点が浮き彫りになります。
他人からの評価が一番シビアで頼りになりますが、自己内省も十分頼りになる「評価」の一つなのです。

いくらあれば開業できる?初期費用とお店を続けるための運転資金の話。

運転資金イメージ

飲食店ビジネス未経験のジョブチェンジ組の方の多くは、手元に退職金があったり、こつこつ開業に向けてお給料を貯金していると思います。そういう方にとって、「いくらあれば開業できるのか?」は大きな関心事です。
しかし、残念ながら、経営したい店舗の規模・立地・ジャンルなどによって、開業前に必要な金額は大きく異り、一概に「○○万円あれば開業できる」という明確な指標は存在しません。
開業に向けていくら必要なのかは、一人一人のオーナーが自分の事例ではいくらになるか?を計算して求めなければならないようです。
そこで、ここでは開業前に必要な資金を「初期費用」「運転資金」「生活費」の3つに分けて計算することを提案します。

初期費用

お店を始めるにあたって、まず必要になるのが「初期費用(初期投資)」です。
リースした店舗の内装費・調理器具や備品、不動産の保証金(敷金と同様のもの。家賃の10か月分程度が相場)などが主な初期費用になります。
補償金に家賃の10か月分もの金額が必要になることからも、多くの出費を覚悟しなければならないことがわかりますが、昨今、この初期費用を抑えるために「居抜き」物件を利用する経営者が増えてきました。
「居抜き」物件は、通常スケルトン(内装や備品をすべて取り払った状態の物件)でリースに出される物件を、あえて以前の状態のままにして入居募集をかけている物件のことを言います。
つまり、以前ラーメン屋だったところをラーメン屋のまま貸してくれるというわけです。場合によっては鍋やおたまなどの細かい備品までついてくる場合があり、初期費用を抑えたい経営者にはお得な物件です。
また、そもそも店舗をかまえることにこだわらないのであれば、キッチンカー営業や、自宅でケータリングや出張料理人などのビジネスを営むのも一つの案です。

運転資金

ここでいう運転資金は、「飲食店を営む上で必要な費用」という意味で、「最悪売り上げがほとんど上がらなくても運転資金で補てんができるかどうか」がカギになっています。
一か月あたりの運転資金は、家賃・人件費・光熱費を中心に、一か月あたりにいくら必要かを計算すると良いでしょう。
あとは、何か月分の運転資金が必要か。
ですが、これは「日本政策金融公庫」の発行している「創業の手引き+」という小冊子に掲載されているデータが参考になります。

この調査結果によると、約6割の企業がお店を軌道に乗せるために6か月以上かかっていることがわかります。
最低ラインとして「6か月分」が一つの目安になりそうです。

生活費

最後に、忘れてはならないのが自分・家族の生活費です。
住居の家賃・光熱費、教育費など家計を営む上で必要最低限の生活費はあらかじめ用意しておくことが理想的です。
これも6か月分が目安になるでしょう。

利益は「いろいろ使って残ったお金」ではなく、「残すべくして残したお金」です。

利益イメージ

やりくり上手の主婦の方に貯金がたまる秘訣を聞くと、「最初から貯金する金額を決めて、残りで生活するのよ」とおっしゃることでしょう。
規模の違いはあれど、家計も会計も同じです。
「どんぶり勘定」と揶揄されるように、ずさんなお金の管理は利益を圧迫します。
なんとなく売れるがままに仕入れ、備品を購入していては、月末に仕入先やクレジットカードの請求書を集めて計算機をたたいたら、なんてこと!今月は赤字だったのか!ということは十分にありえます。
確実に利益を残すには、理想とする利益から逆算して、あらかじめ売上高・仕入高などの目標値を計画しておくことです。
計画時点で利益から逆算して目標値を設定していれば、計画から外れた時点で、「あれ?仕入高が異常に多い。ロスが出すぎているのでは?」など、異変が起こった時にすぐに気付いて原因究明をすることができます。
「利益」と一口にいっても粗利・営業利益・利益率など・・・なかなか理解が難しい話題でもあります。
しかし、利益は非常に重要なトピックなので、別途「利益率」について執筆しています。詳しくはそちらをご覧ください。

まとめ

  • ・飲食業界は参入5年で約2割が閉店に追い込まれる、競争の激しいレッドオーシャン市場である。
  • ・開業前に事業計画を作ることは重要。お店の理念やコンセプトを磨き上げ、サポーターを増やす重要なツールになる。
  • ・開業前に必要な資金は「初期投資」「運転資金」「生活費」の3つに分けて算出し、最終的にいくら必要かを求める。運転資金と生活費は6か月分が一つの目安になりそうだ。
  • ・利益を残すには、利益から逆算していくらの売り上げが必要か、仕入はいくらにおさえなければいけないか。という逆算の発想が必要。目標値を計画し、定期的に目標値と実績にかい離がないかをチェックする必要がある。

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